エイプリルラブストーリー制作小話
宣伝
「ティラノゲームフェス2016メンバーズコレクション」はティラノゲームフェス2016というイベントの参加者にお声かけして作ったノベルゲーム短編集です。
僕が「この作者様の作る物語や言葉って素敵やなあ」と思う人に声をかけ、その作者様らしい色に溢れた作品が集まったものなので、自分にとってはカラフルな花束のようなイメージ。
どうか手に取っていただき、お気に入りの作品が見つかれば幸いです。
(ダウンロード不要でブラウザでそのままプレイできます)
![ティラノゲームフェス2016メンバーズコレクション - 無料ゲーム配信中!スマホ対応 [ノベルゲームコレクション]](https://novelgame.jp/files/picture/509/m_0_1484363602_a54f7b15bf355f73b15751814e6cb6ed_fes.jpg)
エイプリルラブストーリーとは
エイプリルラブストーリーというのは、上記短編集に組み込むために書き下ろした自作のことです。
4月というのが作中でもポイントとなる作品なので、毎年この季節になると宣伝させてもらっています。
自分としてはとても楽しく書くことが出来たお気に入りの作品なので、こちらもよろしければ読んでみてください。だいたい30分ちょいで読めると思います。ご感想などいただけるととても嬉しいです。
というかここから先はネタバレ込みなので、まだ読んでないよ! という方は回れ右でお願いします(白目)。
制作小話
ゲーム版にはない台詞
もう公開してから4年近く経とうとしているので制作小話というのも今更な感じではありますが。
新PCに移行してから小説版(というと大仰かな。ワードで書いたバージョン)のエイプリルラブストーリーを長らく紛失していたのですが、ついこの間ひょんなきっかけで小説版を手元に戻すことが出来ました。
んで久しぶりにぱっと読み返してみたんですが、最後の日に、ゲーム版にはないこんな台詞が入ってました。
「だから君は立ち止まらず、心の望むがままに生きろ」
あれ俺、ゲーム版作るにあたってこの台詞削ったんだ、というのが結構意外でした。
まあこれにはいちおう理由があって、ゲーム版を作るにあたって全体的にあちこち文章は削っているんですね。というのも本作は日記調というスタイルであること、一日の日記ページ数が長いとだれそうという予感があったことから、実プレイ画面においても最大で2ページまでという制限をかけた訳です(そういう構成の日記を書いているというイメージ)。
だから実際のところ、他にも小説版にしかない文章というものは存在するんですが、基本的には細かい描写の排除だったり長い表現を端的に変更したりという対応だったはずなんですよ。だから台詞そのものをカットするというのは、ましてや主人公である僕君の彼女に対するスタンス、あるいは生き方そのものを表すような台詞をカットしていた、というのは不思議な感じがするなあと。
まあ今となっては意図的にカットしたのか、単純に移植作業中に入れ忘れたのかさえ定かではありませんが(死)。
ちょっと新鮮な発見だったので、面白かったです。果たしてこの台詞があった方がよかったのか、ない方がよかったのか、それは読んでいただいた皆様のご想像にお任せします。
世界の終わりと墓標
エイプリルラブストーリーは高校の時に書いた(と思う。うろ覚えだが)「世界の終わりと墓標」という短編のエッセンスを取り込んでいます。
「世界の終わりと墓標」という作品は、自分達を取り巻く現実という世界の果てに辿り着いて、そこで子供である自分達のお墓を作って引き返すという話だったんですが、今ならそれを超えていく風景を書けるかもしれないなあ、と思って取り込んだ記憶があります。
「サマー・ロビン・ガール」も高校の時に書いた「ロビン・ガール」という短編に対する、いちおう年齢的には大人になった僕からのアンサーのような作品として書いたものだったので、僕はそういう切り口で物を書くことがしばしばあるんだな、とぼんやり思ったりもする今日この頃です。
カレー
作中で出てくるチキンカレーのレシピは僕が実際に当時のバイト先の人に教わったもので、材料もいただいて作ったのですがめっちゃうまかったです。でも同じ材料(に該当するもの。まったく同じではない)を揃えたはずなのに、それ以降再現出来ていません(死)。誰か上手な作り方教えて(´;ω;`)
空白のページ
ゲーム終盤に空白のページが出てきますが、改めて読み返してもこの空白のページを入れたのはスーパーナイス演出ですね(自画自賛)。
日記を読む彼女の心理的必然性を思えば、不可欠なものであると考えています。あのページなしで最後のページがあったら、それはただ物語の為だけに存在する日記になってしまう気がするので、この日記を実際に読んでいるというリアリティはあの空白のページにこそ詰まっているように感じます。グッド!(褒められたいので自分で褒めていくスタイル)
致命的なミス
見返してみたら致命的なミスがありました(褒めたあとで落とすスタイル)。
何かフォローの単語とか入ってないかなと思ったけどなかった……いや、フォローが仮に入っていたとしても許容出来るかどうか……。気づく人は気づくかもしれないけど、物語の空気的に気づかれなさそうなので、気づいた方は生温かい目でスルーしてやってくださいヽ( ´ー`)ノ
ネーミングセンス
僕が書くヒロインはネーミングセンスに難ありという設定を持っていることが多いことに気づきました(死)。
「猫になりたい」もそうだし、本作もそうだし、そもそもしらたきという名前の猫を出したのは随分前にあってそこから既に……(遠い目)。
なんだろう、致命的な痛みにはならないけどその人なりの弱点みたいなものを表したい時につい使ってしまうのかもしれない。でも個人的に「しらたき」という名前の猫というのはとてもいいと思いますです、はい。おくゆかしい感じがする。好き。
ノベルゲームとしての表現
本作はノベルゲームにしてよかった作品だと思っています。小説版も悪くはないんですが、下記の点でゲーム版の方が優れているなと。結果、読後感がだいぶ違うというのが個人的な印象です。
- ページをめくる音があることで臨場感が増す
- 日記という性質上、必要最低限の情報しか書けないので、背景画像を入れられると情報補完が出来る
- BGMが感情の起伏を上手に盛り上げてくれる
小説サイト運営時代から大変お世話になっていますが、やはり「水珠」様の写真はとても心を惹きつけるものがあって僕は好きです。
「君の音。」様のピアノもいつもお世話になっています。ゲームとして考えるとループが難しいものが多いのでBGMとしては使いにくい場面もしばしばあるのですが、それでも強く心を揺り動かしてくれる旋律は唯一無二なので、ここぞという場面ではお借りした楽曲を使わせていただくことが多いですね。
いわゆるフリーゲームはやはり色んな方の力があって初めて成立することがほとんどなので、とてもありがたい限りです。この場を借りて改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
物語における善悪
ここ数年はあまり善悪の話は書かないようにしています。結局それを「よい」か「悪い」で表現してしまうと、説教じみたものになるし、押しつけがましくなるので。
だからまあ、なるべくそのキャラクターがどう生きたのか、どう生きたいのか、を描くようにしています。本作もそういう感じ。彼らの生き方を気持ち悪いと感じる人もいるだろうし、理解出来ないという人もいるだろうし、同情する人もいるだろうし、あるいは反対に憧れるような人もいるかもしれない。
ただ、彼らはこういう風に生きたよ、というところまでを書く。そこから先は僕が表すべきことじゃない。
例えば、それって幸せだよねって書いた瞬間、物語である意義を失ってしまうように感じる。そもそも彼らが幸せなのかどうかは僕にはわからない。やっぱりそれは僕が決めることではないように思う。それを決める言葉を書いてしまった瞬間、それはもう彼らの話じゃなくて作者の主張になってしまう感じがする。そういうのは物語じゃなくて論文でやればいい。もし幸せであると信じる話だったとしても、それはそれが幸せであると信じているキャラクターを書くべきであって、幸せであると断じる物語を書くべきではない。
昔は自分が「いい」と思ったことが「いい」として伝わって欲しいという気持ちがあったんですけどね。これは果たして成長なのか、それとも単なる老いなのか。
まあそんなことを思いながら新作どうしようかなと悩む今日この頃です。にんじん色の髪の女の子と、神様嫌いな男の子の話にいい加減決着をつけたいんだけど、なかなかストーリーの整理が追い付かないっす。 とまあ、もう制作小話と関係なくなってきたのでここいらで終わっときましょう。
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。